私は英語講師として15年以上、数千人の日本人学習者を指導してきました。その経験から、ネイティブスピーカーと日本人学習者との間にある大きな壁の一つが「音声変化」だとはっきりと感じています。TOEIC満点、英検1級を持つ私自身がネイティブと自然に会話できるようになった鍵も、この音声変化の理解と習得でした。
音声変化とは、簡単に言えば、英語が自然に話される時に単語や音がつながったり、省略・変化したりする現象のことです。実際のコミュニケーション現場では、教科書通りの「きれいな発音」よりも、こうした音声変化を身につけているかどうかが、会話のスムーズさや自然さを決定します。
以下では、私が指導経験を通じて特に重要だと感じてきた音声変化の種類を実例を交えながら解説します。
ネイティブの日常会話に頻出する音声変化
リンキング(単語の連結)
リンキングとは、単語と単語が結びついて一つの音のように聞こえる現象です。私が英語教師として指導する際に最も強調する部分の一つです。例えば、
• “turn off”は「ターン オン」ではなく、「turnon」と一息で発音します。
• “an apple”も「アン・アップル」ではなく、「anapple」となります。
このリンキングを生徒に指導した結果、多くの生徒がネイティブの発音を聞き取れるようになり、スピーキングの流暢さも向上しました。
リダクション(単語の弱形化)
リダクションは頻繁に使う機能語(to、for、ofなど)が弱く短縮される現象です。
• “I want to go” は “I wanna go” のようになります。
• “give it to me” は “givittame” と聞こえるほど短縮されます。
私は授業でこれを意識的に練習させることで、生徒たちが映画や海外ドラマを自然に理解できるようになった例を何度も目にしています。
フラッピング(米国特有の音変化)
アメリカ英語のt音が「d」や日本語のラ行に近くなる現象です。
• “water” は “wadər” や “warər” のようになります。
• “little” は “liddle” と発音されます。
これは特にアメリカ英語を学ぶ際には不可欠で、私自身、アメリカで英語教育を受けた際に、この音声変化をマスターすることで格段にコミュニケーションが円滑になりました。
エリジョン(音の脱落)
これは速い会話で特定の音が脱落する現象です。
• “next day” は “nex day” と聞こえます。
• “handbag” は “hambag” に変化します。
リスニング教材やシャドーイング練習でこの音の脱落を理解し、練習を重ねることを私の授業でも推奨しています。
アシミレーション(音の同化)
隣り合う音が互いに影響を与え合い、音が変化する現象です。
• “could you” は “cudju” と発音されます。
• “did you” は “diju” と自然に同化されます。
効果的な音声変化の習得方法(講師が実践する秘訣)
私が実際に指導現場で成果を挙げてきた最も効果的な方法は「シャドーイング」です。シャドーイングとは、ネイティブの発音を即座に真似するトレーニング法です。教材としてニュースや映画のセリフ、Podcastなど、実際の会話を使うことがポイントです。
具体的な手順として、
1. 音声を一文ずつ聞き、その後すぐに追いかけて発音します。
2. 発音記号(IPA)を見ながら練習すると、さらに効果的です。
この方法を取り入れた私の生徒は、TOEICスコアが数か月で100点以上上がった例もありました。
英語試験にも役立つ音声変化の理解
英語検定やTOEIC、IELTSなどの試験においても、ネイティブが自然に使う音声変化の理解は高スコア獲得のための重要な要素です。私が指導する生徒の中でも、音声変化を習得した生徒ほどリスニングのスコアが飛躍的に伸びています。
ネイティブに近づくための心構え
音声変化を学ぶ際の注意点としては、まず理論的に理解した後、実際の会話で練習を繰り返すことです。無理にすべての変化を一度に取り入れる必要はありません。日常会話で頻繁に使われる変化から徐々に身につけていくと良いでしょう。
まとめ(指導現場からのメッセージ)
英語音声変化を習得することは、英語力を大きく向上させるための近道です。私がこれまで多くの生徒に伝えてきた経験上、音声変化を習得するとリスニング力、スピーキング力ともに劇的に上達します。ぜひ、日々の学習に取り入れて、ネイティブに近い自然な英語力を身につけましょう。
(著者プロフィール:東京都内の英語専門スクールで15年間講師を務める。TOEIC満点、英語教育学修士号保持。)