近年、人工知能(AI)技術の急速な発展により、様々な分野でAIの活用が進んでいます。教育分野においても、AIを用いた学習支援や評価システムの開発が盛んに行われており、英語学習の世界でも例外ではありません。
特に、英語のライティング試験においては、AIによる自動採点システムへの注目が高まっています。その代表例が、英検(実用英語技能検定)のライティング試験へのAI採点の導入です。
本記事では、英検ライティング試験におけるAI採点の現状と可能性について詳しく解説します。また、AI採点システムの課題や、受験者が知っておくべきポイントについても触れていきます。
英検ライティング試験の採点方法
まずは、英検ライティング試験の採点方法について振り返っておきましょう。
英検のライティング試験は、級によって出題形式や評価基準が異なります。概ね以下のような内容で実施されています。
級 | 出題形式 | 字数 | 時間 | 配点 |
---|---|---|---|---|
5級 | 短文穴埋め問題 | – | 5分 | 10点 |
4級 | 自由英作文 | 30語程度 | 15分 | 10点 |
3級 | 自由英作文 | 50〜60語 | 30分 | 10点 |
準2級 | 自由英作文 | 70〜80語 | 30分 | 20点 |
2級 | 自由英作文 | 100〜120語 | 40分 | 25点 |
準1級 | 自由英作文 / 資料読解型 | 200〜240語 | 45分 | 28点 |
1級 | 自由英作文 / 資料読解型 | 280〜320語 | 60分 | 40点 |
これらのライティング試験の採点は、これまで専門の採点者が手作業で行ってきました。採点者は、受験者の英文を一つ一つ丁寧に読み、以下のような観点から評価を行います。
- 課題に対する適切さ(課題達成度)
- 文章構成の論理性・一貫性
- 語彙・表現の豊富さ・適切さ
- 文法の正確さ
採点は問題ごとに定められた採点基準表に基づいて行われ、各評価項目の到達度に応じて配点が決定されます。
しかし、この手作業による採点には、以下のようなデメリットがあることが指摘されています。
- 採点に時間がかかり、結果の返却が遅くなる
- 採点者の主観が入りやすく、評価のブレが生じる可能性がある
- 大量の答案を処理するのが困難
こうした課題を解決するために、近年、英検ライティング試験にもAIによる自動採点システムの導入が検討されているのです。
英検ライティング試験へのAI採点の導入
英検ライティング試験では2021年度より、一部の級でAI採点システムの導入が始まっています。現在、以下の級でAI採点が導入されています。
- 4級
- 3級
- 準2級
これらの級では、従来の人力による採点に加えて、AIによる自動採点が実施されています。つまり、受験者の答案は人力とAIの両方で評価され、最終的な得点が決定されるわけです。
英検のAI採点システムは、過去の答案データを大量に学習することで、受験者の英文を自動的に評価することができます。具体的には、以下のようなプロセスで採点が行われます。
- 受験者がライティング問題に解答し、答案を提出する
- 答案がデジタルデータ化され、AI採点システムに送られる
- AIが答案を分析し、設定された評価基準に基づいてスコアリングを行う
- AIによる採点結果と、人力採点の結果を照合し、最終的な得点を決定する
AI採点システムの導入により、採点の迅速化・効率化が図られ、採点者の負担軽減にもつながります。また、AIによる一貫した評価により、採点基準の統一化も期待できます。
ただし、AI採点にも一定の限界があることには注意が必要です。現状のAI技術では、英文の内容や論理展開の妥当性を完全に判断することは難しいとされています。そのため、英検協会では人力採点とAI採点を組み合わせることで、採点の質を担保しているのです。
英検ライティングのAI採点は甘い?
英検ライティング試験にAI採点が導入されたことで、「AI採点は甘くなるのでは?」という声も聞かれます。果たして、AI採点の評価基準は従来の人力採点と比べてどうなのでしょうか。
結論から言えば、AI採点が必ずしも甘いわけではありません。英検協会によれば、AI採点のアルゴリズムは過去の答案データを大量に学習することで、人力採点に近い評価を行えるようになっているとのことです。
実際、英検協会が公開しているデータを見ると、AI採点の結果と人力採点の結果の相関は非常に高いことがわかります。つまり、AI採点は人力採点とほぼ同等の評価を下しているというわけです。
ただし、個別の答案を見ると、AI採点と人力採点で大きな点差が生じるケースもあります。特に、以下のような答案はAIが正しく評価できない可能性があります。
- 課題とは無関係の内容を書いている
- 文法的には正しいが、意味不明な文章になっている
- 型にはまらない自由奔放な表現を多用している
こうした答案は、AIの学習データにはない特殊なパターンであるため、適切に評価できないのです。
したがって、「AI採点は甘い」と単純に判断するのは早計だと言えます。むしろ、AI採点の特性をよく理解し、それに合わせた解答を心がける必要があるでしょう。
ポイント!
AI採点では「型にはまった」表現が高評価を受けやすい傾向にある。
独創的な解答を心がけるよりも、オーソドックスな英文を正確に書くことが重要。
無料のAI自動採点アプリ・サービス
英検対策としてAI自動採点を利用したい人には、無料のアプリやWebサービスがおすすめです。ここでは、代表的なAI自動採点サービスを2つ紹介しましょう。
①「EIKEN Writing Checker」
英検協会公式の自動採点サービスです。英検3級・4級の過去問や練習問題にチャレンジでき、解答をAIが自動で採点してくれます。
使い方は簡単で、アプリに英文を入力するだけ。数秒で採点結果とアドバイスが表示されるので、気軽に自分の英語力をチェックできます。
【EIKEN Writing Checker の使い方】
- アプリをダウンロード・インストール
- 級を選択し、出題される問題を確認
- 制限時間内に英作文を入力
- 「採点」ボタンを押すと、即座に結果が表示される
- 採点結果を確認し、改善点を把握する
②「Lang-8」
ネイティブスピーカーによる英作文の添削サービスです。AIによる自動採点ではありませんが、リアルな添削を受けられる点が魅力です。
Lang-8では、自分の英作文を投稿すると、世界中のネイティブスピーカーから添削やアドバイスをもらえます。自分も他の言語学習者の投稿を添削することで、無料でサービスを利用できる仕組みになっています。
AIによる画一的な採点に頼るのではなく、生身の人間による評価を受けてみるのもおすすめです。
英検ライティング試験の採点基準
最後に、英検ライティング試験の採点基準について確認しておきましょう。冒頭でも触れたように、ライティング試験の採点は以下の4つの観点から行われます。
- 課題達成度:与えられたトピックに対して適切に答えているか
- 構成:文章全体の構成が論理的で、筋道が通っているか
- 語彙・表現:トピックに即した適切な語彙・表現が用いられているか
- 文法・スペリング:文法的な誤りが少なく、正確に英文が書けているか
これらの観点は、人力採点とAI採点に共通するものです。つまり、AIも基本的にはこの4つの観点から英文を評価しているわけです。
したがって、英検ライティング試験で高得点を狙うためには、これらの採点基準を意識した解答作りが欠かせません。以下の例を参考に、バランスの取れた英文を書く練習をしていきましょう。
【英検2級ライティング問題例】
Do you think it is important for high school students to have a part-time job?
採点基準を意識した解答例:
I believe that it is important for high school students to have a part-time job for several reasons. First, working part-time can help students learn valuable skills such as time management and communication. These skills will be useful not only in their future careers but also in their daily lives. Moreover, having a part-time job can teach students the value of hard work and responsibility. They will learn that they need to work hard to earn money, and that they are responsible for their own actions at work. Finally, a part-time job can provide students with a sense of independence and confidence. Earning their own money can make them feel more adult and in control of their lives. In conclusion, I think that part-time jobs offer many benefits to high school students, and that the experience is an important part of their education and personal growth.
この解答例では、与えられたトピックに対して明確にYesの立場を取り、理由を3点挙げて論理的に主張しています。また、トピックに関連した適切な語彙を用いつつ、文法的にもほぼ誤りのない英文になっています。
このように、採点基準に沿った「型にはまった」解答を意識することが、英検ライティング試験の高得点につながります。AI採点の時代だからこそ、基本に忠実な英作文力が求められるのです。
まとめ
本記事では、英検ライティング試験におけるAI採点の現状と可能性について解説しました。AI採点システムの導入により、採点の効率化と公平性の向上が期待される一方で、その評価基準には一定の限界もあることがわかりました。
AI採点に過度に依存するのではなく、あくまでも自分の英語力を磨くことが大切です。オーソドックスな表現を正確に使いこなす練習を重ね、英検の採点基準に沿った解答ができるよう備えましょう。
無料のAI自動採点アプリなども上手に活用しつつ、地道な努力を積み重ねていくことが、英検ライティング試験突破のカギとなります。ぜひ本記事を参考に、効果的な対策を進めていってください。
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項目 | 詳細 |
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単語帳 | 『英検 でる順パス単』シリーズ |
英作文本 | 『英作文が面白いほど身につく本』 |
英検ライティング試験の突破は、着実な学習の積み重ねが何より大切です。AIの力を借りつつも、最後は自分の力で合格を勝ち取るという気持ちを忘れずに、日々の努力を続けていきましょう。
読んでいただきありがとうございました。皆さんの英検合格を心より応援しています!